単発の旅館バイトで出会った仲居さん・自由であることの可愛げ

単発の旅館バイトでは、独特な魅力(オーラといってもいい)を帯びた複数のひとに会った。

例えば、仲居のNさん。女性。推定70代。

俺が宴会場に入って「よろしくお願いします」と言うと、「今日は初めての人ばかりで困るネエ」というようなことを早速言われた。まるで意地の悪い姑さんがお嫁さんに小言をいうような、そんな口調だ。

 

そしてNさんは厳しかった。「とにかく早く。適当でいいから早くやって頂戴」

「いいわあ。代わる。これやって頂戴」

俺は以前に読んでいた複数の本で「50点でいいから早く出すべき」という主張が繰り広げられていたのを思い出した。丁寧にやるのは結構だが、仕事が遅いことには始まらない。急いだ。

 

最初こそ厳しい方だったが、しばらく教えを仰いでいると、俺はNさんになんとなく好意のようなものを抱くことになる。

とつぜん演歌を歌いだしたり、「今日、12時(0時)までごはん食べられないから」と真顔で言ったり(このアルバイトは21時30分までだし、「まかない付き」という条件だった)。

条件とは全く異なるブラックバイトだったか?俺がゴクリと唾をのんで覚悟を決めると、それを見た彼女は間髪をいれずに「嘘!!!嘘でーーす」とおどけてみせた。

この辺りからおれは、彼女にたいして「やれやれ。仕方のないひとだな」となんとなく可愛げを感じるのであった。

この自由さ。人と会うと(とくに初対面の相手とあうときは)硬くなってしまう俺は、彼女のようにちょっと「やれやれ」ではあるけれど、子供のように自由に振舞っている彼女を目標にしたいと思うのであった。

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